アドリブ至上主義

 TRPGの魅力は、複数のメンバーにより一つの物語を共同で作って行く事にある。
 そしてそれはCRPGのように全ての選択肢がGMにより用意されているのでは無く、PLが自らで選択肢を切り開く自由性が十二分に存在している。
 そう、多かれ少なかれアドリブの上に成り立っている*1のがTRPGなのである。
 
 と、勝手に定義づけしてみる。
 
 そんな訳で、我輩がマスタリング技術として最重要視*2するのは、アドリブです*3
 
 広義の意味で言えば、「アドリブ」とは前もって準備しない状態での行動の全てを指す事になるが、ここでは「筋書きのリアルタイム構成能力」をアドリブと定義して話を進める。
 
 初めに、どういう状態を持ってアドリブ状態を指すか?
 PCが筋書き通りに動いている上でのNPCとの会話の受け答え。これはアドリブの絡む部分もあるかもしれないが基本的にはロール(演技)だ。
 PCが筋書きから離れる行動を取った際に、それを補正し本来の流れへの修正。これも通常のマスタリングに過ぎない。
 PCの取った行動に対して、筋書のない所に筋書を作っていく。これこそ「筋書きのリアルタイム構成」と言う意味での「アドリブ」だ。
 
 ちなみに、アドリブ推奨派だからと言って、何もフルアドリブでのセッションを常に行おうと思っている訳ではない。
 なにせ、題材も何も用意しないでのまさにフルアドリブと言える方法を行う為には、吟遊詩人*4と称せるレベルの筋書の即興作成の力を必要とするし、流石にPCに負担を掛けないレベルでそれが行えると思えるだけの自惚れは持てていない。
 
 それではどのようにアドリブを取り入れているか?
 まずは、GMがどのようにしてアドリブが必要な状態に陥るかを分析してみよう。

  1. 筋書と言うかシナリオを作っていない。
  2. 用意していた筋書に対して、PCが想定外のアクションを起こした。
  3. 大まかな筋書は用意しているが、個々の筋書は用意していない。

 1.は、いうまでもなくフルアドリブだ。当たり前のようにこれが出来るGMのことは尊敬する。
 2.は、想定外の行動に対する対処。これはTRPGである以上よくありえる状況だし、GMである以上避ける事はできない。ただしこれはメタプレイを行いPCの取りえそうな行動に対する対処を予め用意しておくことで緩和は可能な要素であるから、アドリブが苦手であっても事前準備である程度カバーが出来る。
 3.は、いわゆるアドリブを前提としたシナリオと呼べるものだ。大筋をどのレベルまで用意するかで、アドリブの比重は変わってくるが、大筋があるので辻褄のあったシナリオにすることができるし、シナリオの用意に掛ける時間を削減することが出来る。
 
 そんな訳で、我輩がシナリオを作成する場合は、主に3の手法を取り入れている*5
 アドリブを想定したシナリオの作り方に関しては、また次の機会に回すとして話しを続けよう。
 
 2.想定外の行動に対する対処についてはの常識的*6に考えて、出来るモノは許可すれば良い。出来ないものはその世界での常識を伝え却下するなり、その世界の常識に合わせた解釈で採用するのも良い。
 一番萎える*7のは、その世界での常識ではPCの能力内で出来るはずの事であり、且つ進行の妨げを目的*8としたわけではない行動に対して不許可が出ること。これはそのGMの技量にも関わるものでもあるのだけど、我輩は絶対に取りたくない裁定だ。
 
 だから、シナリオを用意する際には確定死亡のキャラは存在しない*9
 例えそれがご都合主義と言われても、プレイヤーが望み、それに対して全力を持って取り組んだのならば相応の報いを受ける事が当然だからだ。*10
 特にエンゼルギアでは、ヒーローポイントと呼べるロゴスの存在のおかげで、福音さえ起こせればご都合主義を呼びやすいと言う設計となっている。むしろご都合主義推奨設計と呼んでも良いほどだ。
 ただ、だからと言ってもご都合主義を願うダイスを振る機会と言うものは、プレイヤーの選択によって行われるものであって、必然的に起こさせるのであってはいけないとも思う*11
 シナリオの基本軸としては飽く迄ご都合主義を想定しない筋書*12としておくべきだろう。
 
 クリティカル*13による活躍なんかよりも「自分のPCが自らの選択で○○をしたからこそ、○○と言う結果が得られた」と言う事実の方が遥かに達成感、充実感を生み出すことが出来ると思う。
 その結果を事前に用意する事も十分に可能だが、アドリブはその状況を生み出す可能性を大いに広げてくれる要素となる。
 
 なので、まとめとしては、「アドリブは単体で発揮する能力としてよりも、筋書を補強、補助していく能力として運用する方が効果的に扱える。」と、いった感じになるかな。
 エンゼルギアの能力で言えば、ロゴスにあたる要素。各種能力の足りないものを補う事の出来る万能選手といったところや。
 
 アドリブと言うのは無限に広がる可能性。
 同じシナリオを同じ選択を持って遊んだとしても、アドリブの内容が変わればそれは違う物語る。
 だから、TRPGは面白い*14

*1:全くアドリブが無いようなモノはTRPGと言うよりもボードゲームに近いものであるだろう。

*2:ちなみに、これは自分がGMをする際に心がけているものであって、他のGMにもそれを望んでいると言う訳ではありません。人それぞれ個々の持ち味を持っているしね〜。

*3:ちなみに重要視しているからと言って、それが得意であるかどうかはまた別の問題や。

*4:即興で何でもできる人を指す敬称

*5:まあ、普通は既成シナリオレベルの作りこみはしないだろうから、この手法が一般的だとは思うけど。

*6:現実世界の常識・物理法則では無く、対象の世界での常識・物理法則・超法則を踏まえた常識

*7:転じて、自分がGMの時にやってはいけないと心がけている事。

*8:ちなみに全ての提案を取り入れる事が高いアドリブ能力だとは言わない。PL全体及び場の雰囲気を察し、悪意のあるシナリオブレイカーを、合法的に排除する事もマスタリング技術としては重要だ。

*9:シナリオの流れ上、ほぼ確実に死亡フラグなキャラは普通に用意するが、どんな行動を取ったとしてもそれが確定であるような運用は行わない。

*10:なお、基本方針をそれとして、どんなに頑張っても不可能であることを入れる事で、よりシナリオに深みを持たせることは出来るので、その辺りは匙加減といったところ。

*11:つまり、シナリオ上の機会を用意していたとしても、PCが望まなければ全部が全部に振る機会は与えない。

*12:基本はBADENDルートでご都合主義での分岐でGOODENDルートに行ける等

*13:エンゼルギアには無い要素だけど

*14:と、強引にまとめてみたものの、読み返してみると何が言いたいか分からない件について……まあ、駄文と思ってスルーでヨロ!