次世代シュネルギア開発計画

 2001年現在、第三世代人間戦車、いわゆるシュネルギアの運用については、未だ過渡期と言えるだろう。
 その、搭乗可能な資格を持つ者が極端に少ないという性質と、軍用兵器としては極端に短い稼働時間という性質は汎用的な兵器としては、致命的な欠点であると言える。だが、その点にさえ目を瞑れば、現行運用上の対天使兵器としては再考のスペックを誇っていることも確かだ。
 また、対天使戦のみを想定するのであれば、超高速域での性能がほぼ必須で有る以上、リミッターを解放した機械化兵や高速戦闘モードを駆使する完全機械化兵とて、超高速域に於ける稼働時間はそう大差はない。
 その他にも、報告例では数多くの想定スペック以上の戦果についても報告されているが、不確定要素については戦闘能力としての計上には含めないものとする。
 
 以上のことから、シュネルギアは強力ではあるモノの必要十分数を配備することが出来無いため、戦争の勝利を目指すに当たっては不十分な兵器である。
 例え量産体制を敷くことが出来たとしても、それを扱う者が足りないのであれば無用の長物に過ぎない。
 
 それらの経緯により、次世代型人間戦車、つまり第四世代人間戦車の研究開発が行なわれていることは容易に分かるだろう。
 本日は、現状での進捗状況の調査結果を掲示することとする。
 
 まず、第四世代人間戦車とっしてはどのような者が必要とされ、どういうモノが開発されているのか?
 現段階に於いては、明確に第四世代人間戦車と定義される兵器は存在しない。
 存在するのは、第四世代人間戦車を目指して実験開発中の幾つものプロトモデルが存在するだけである。
 
 第四世代人間戦車を開発するに当たって必要とされる要求スペックは、高速戦闘能力、搭乗条件の緩和、必要人員の軽減、稼働時間の増加と言ったところだ。
 
 この内、稼働時間については、高速戦闘能力とトレードオフな面も有るため、比重的には下げざるを得ない。
 
 次に、搭乗条件の緩和についてだが、コレについては複数の対処ケースが開発されている。
 第三世代人間戦車では、黒い天使核を持ったギアドライバーを操縦者として必須としている。この事実がシュネルギア配備数の頭打ちの最大の要因となっているため、少なくとも完全機械化兵、出来れば機械化兵にまで扱える兵器であることが好ましい。
 その事から、前世代人間戦車であるアペルギアやハウニブーの発展型を開発している所もあるが、それはあくまでも前世代型人間戦車の発展型でしかなく、第四世代人間戦車とは呼べないだろう。
 
 第四世代型の候補の一つとして、完全機械化兵をそのまま巨大化させたもの、つまり人間戦車自体に生体ユニットを搭載したタイプのモノが開発されている。
 しかし、そのタイプのものには暴走の報告が非常に多く、完全機械化兵よりも安定性に欠けて、フライングユニットに乗った完全機械化兵よりも汎用性に欠け、さらにコストも馬鹿にならない事から、開発は難航している模様。
 また、完全に戦闘AIを搭載したタイプのモノも開発されている。
 そちらは、機体制御を行ないつつ天使兵と高速戦闘を行なう事が可能なレベルまで洗練された戦闘AIの開発が未だ出来ておらず、また相応の処理速度を持った演算ユニット(スーパーコンピューター)を搭載する場合、それは機体コストに直接響き、損耗率の高い兵器に現状のシュネルギアをさらに超える製造及び管理コストで製造するのは、非効率で極まりないと言うことから、戦闘AIの高度洗煉及びコストの削減化が課題となっている。
 他にも、遠隔操作可能型なども開発されているが、こちらは映像連動精度の現状での限界値の他、通信妨害手段への対抗策が作られるまでは、現実性は低いものとなっている。
 
 次に、必要人員削減タイプ。これは強力な人間戦車を扱うためには、黒い天使核による影響を切り捨てることは出来ない、と言う方面からのアプローチによる開発だ。
 一つは、管制機能の全自動化で、黒野天使核を持ったナビゲーターのサポートを必要としないタイプの機体だ。
 こちらは、実現可能性的には、他のモノに比べ比較的高くはあるが、総合スペック的にはシュネルギアに及ばない部分も数多く存在する。
 位置づけ的には、アペルギアシュネルギアの丁度中間のイメージだろうか。
 鹵獲機から得られた情報から見ると、合衆国系の開発と言われるフーファイターはこの特性に非常に近く、黒い天使核を必要とするところを、薬物や遺伝子操作などで欺瞞することで拒否反応を低減させている機体がそれなりに見られる。コレまでの分析から行くと、それらの処置を受けているモノの天使化の可能性は、従来の兵に比べて非常に高く、また、機械化手術以上に非人道的側面が高いこともあり、大々的な開発は行なわれていない。
 その他にも、火器管制ナビゲートの自動化の代わりに、複数の管制官によるサポートで管制を行なうタイプの機体なども開発されているようだ。
 
 
 高級将校に対する、通常レベルでの情報掲示可能範囲での報告は以上となる。
 現段階では、黒い天使核の有無に関する制限事項の画期的なブレイクスルーが発見されていないため、どれも使い物にならないか、シュネルギアに見劣りするモノばかりであることは否めない。
 
 そこで、現行の開発比重では、第四世代型人間戦車の開発よりも、現行のシュネルギアの発展計画。つまり次世代シュネルギアの開発比重が高いものとなっている。
 それに関しての報告は次回行なうものとする。
 
 
 どちらにせよ、第三世代人間戦車の仕様では攻勢に出る為の戦力としては不十分で有るため、戦争に勝つためには乗員の制限の緩和された第四世代人間戦車の開発は必要だ。
 もしくは、人間戦車開発への資金を切り捨て、全て完全機械化兵及びフライングユニットの生産に回す方が賢い選択ではあろう。
 
 しかしながら、この戦争の真意は、第三世代人間戦車とギアドライバー、つまり有資格者と呼ばれる者達の中にこそ有るのではないかと感じてしまうのは、開発者としては無粋な邪推であろうか?