エンゼルギアにおける合衆国の思惑/設定

 まず、合衆国(ステイツ)を語るにあたって外す事が出来ないのが、合衆国の統治者である教皇の存在だ。
 これは、暗殺されたとして姿を消し陣換えを行なった総統(フューラー)と見てまず間違いないだろう。
 総統の暗殺に成功したラルフ・マスケンヴァルがそれになっていると言う可能性は0では無いが、それでは主に後述するヤシマ=統一帝国側の思惑設定に無理が出てきてしまう為、ここではスッパリと無いものとする。
 また、天使十字軍の最高指揮官として総統に共感した、もしくはダークサイドに堕ちた、もしくは何らかの思惑のあるラルフ・マスケンヴァルが付いていると言う可能性についてもここでは否定しておく。
 これから語る考察に於いて、彼には第三勢力に居てもらう方が面白いものになりそうだからだ。
 
 まずは、合衆国の戦略分析を行うに当たって、天使十字軍に注目してみる。
 GF誌の情報によると、天使十字軍の幹部でさえも天使の召喚及び制御を行える者はほぼ居ない状況にあると言う。
 これは、実質的に天使の召喚及び指令については、全て教皇である総統が行っているものである事を想像することは難しくない。
 現状戦力を分析すると、世界の9割を支配下に置いている合衆国ではあるが、天使兵を抜きにして考えると強力な天使核兵器を配するヤシマ=統一帝国を敗退させる事は、例え物量を注ぎ込んだとしても、非常に難しいものだと言えよう。
 そこまでに天使兵は強力で且つ絶対的な戦力なのである。
 これが何を意味するかと言うと、合衆国側としてはこの戦争は全て教皇の意向次第で動いていると言う状況を構築している。
 教皇がその気になり、現状召喚されている全天使兵をヤシマへ嗾ければ、どれだけ優秀な天使核兵器が配備されていたとしても半国も持たずにヤシマの国土ごと地図上から抹消する事も出来なくは無いはずだ。
 逆に、教皇が一切の天使兵の派兵を渋れば、現状ヤシマを包囲してる艦隊とてそう期間を置かずに反抗作戦で壊滅させられてもおかしくは無い。
 要するに、合衆国軍に強硬派の指揮者が居て、教皇の意に叶わぬ作戦を行なったとしても、天使兵の援護が無くばほぼ確実にその作戦は潰される事になろだろうと言う事だ。*1
 また、合衆国軍の殆どの者は天使十字軍が天使を管理して運用しているものと信じているだろうから、ここまでたった一人の男によってこの戦争の手綱を握られていると気づく者は、ほぼ居ないだろう。
 これは教皇にとっては非常に優越的な状況であると言える。世界は彼の手一つで動いているのだ。
 
 では、何故ヤシマをすぐに滅ぼさないか? と言うと、そこに教皇(総統)の別の思惑があるからだ。
 
 それでは、教皇/総統の思惑は何であるかを焦点に考察してみよう。
 まず、総統が合衆国に鞍替えしたのは気まぐれや偶然的なものでは無く、最初から想定していたシナリオ通りの動きである。
 全ての始まりは、「第一の喇叭」と呼ばれる事件。天使核兵器の基礎技術を確立する元となった出来事、1939年の「マスケンヴァル」事件。
 一人の大天使*2が踊らされ、封印された天界の扉への鍵を総統が得た事によって、「ヨハネの黙示緑」になぞられた千年王国を作る為の計画に対する最大の障壁が喪失した。
 まあ、この辺りはある意味「パンドラの箱」にちなんだストーリ設計と言った感じになってるかな。
 その後の世界大戦は、まず天使核兵器が非天使核兵器を対象に圧倒する事を証明し、統一帝国の独占配備を充実させる為の戦争であり、その後合衆国へ移り「第二の喇叭」事件を起こし天使を召喚、天使がそれらを圧倒する戦力である事を証明しつつ天使の誘導に関する基礎情報を集めていったと言う感じか。
 この時点で、己の私兵のみで勢力バランスをほぼ自由に操作できる体制が確立する。世界大戦自体が壮大な前準備でしかなかったって奴や。
 ゾフィー亡命後の統一帝国では、既存の第一世代人間戦車や機械化兵の発展型であるアペルギアや完全機械化兵等を開発できる者が居たとしても、さらにそれの発展型『黒い天使核を必要とする』天使核兵器を独自に開発できるとは思えない。これはヴリルなどを通して、教皇陣営*3からヤシマ=統一帝国に供給された技術である可能性が高い。*4
 
 なぜ『黒い天使核』を必要とする兵器なのか? それは「第三の喇叭」以降インフレ*5ぎみの黒い天使核持ちを効率良く集め、そして始末する為にある。
 ヨハネの黙示緑の中でよく使われるキーワード、そして本作中に出てきていないキーワードとして「獣の数字666」が存在する。
 これは人間を表す数字であるとも言われるが、エンゼルギアの世界観に於いてこいつを「第三の喇叭」により出現する事となった「黒い天使核」の数に当て嵌めて見るとしよう。
 ある程度の期間にわたって出現し続けるのでまあ、ざる換算で世界人口を50億人としても約750万人に一人と言うなかなか良さげな数値となる。年齢層が新規誕生層になるから、またざる換算で1986年以降に生まれた子供100万人に一人くらいとすれば、それなりに公式の数値*6に近いものとなるだろう。
 さらに世界的に見た環境としては、統一帝国は黒い天使核を持つ有資格者を血眼になって探しており、セラピアしかり、メイリイしかり、その探索範囲は国外にも目を向けている。
 国外では合衆国による厳しい規制にて天使核兵器の開発は禁止されている以上、反合衆国派の勢力が黒の天使核持ちを手元に置いておくメリットは少ない。また、反合衆国派には統一帝国を支持する*7派閥も多く、その結果ヤシマ=統一帝国に有資格者を送り込む事になるケースも少なくは無いだろう。
 総統側としては、亡命道中を潰すも良し、よしんばヤシマに辿り着いたとして、それは戦場に出てくるのだからそこで潰せば良し、また戦火の中天使化して散るも良しと、他に探す勢力が一切存在しない世界で捜索を掛けるよりも非常に効率が良く、さらに自分がそういう意図で動いていると思われることは殆ど無いという素晴らしい環境だ。
 「第四の喇叭」と言えるヤシマへの銃砲弾道ミサイルでの攻撃は、ようやく有資格者の総数が揃ったと言う事での楔的な意味があるのかもしれない。まあ、これに関しては千年紀の〆を括る1999年の最後に作戦の完遂を行う為に動いたと言う見方もできるから、どちらとは言えないけど。
 まあ、あとは「ノストラダムスの終末預言書」に合わせている部分もあるのだろうさ。ってか、ノストラダムスってキリスト教に関連あったかどうかは知らないが、総統のちょっとした余興なのかも知らん。
 合衆国が黒い天使核の回収に動いているようには見えない所から、この作戦の趣旨的には黒い天使核持ちの命を666人分始末すると頃にあるのかも……。もしくは黒の天使核持ちの特性である「死後に黒の天使核が顕現する」という所から、地球上に666個の黒の天使核を顕現させると頃に鍵があるのかもしれない。
 なので、第十世代完全機械化兵の材料として使われたりしても、地球上に顕現している事には変わりないので問題無い。
 
 天使大戦開戦時に聞こえたと言われる「なおも三人の天使が喇叭を鳴らそうとしている」という所から、この作戦のステップはあと3つ。
 「第五の喇叭」は、有資格者666人の最後の閉め辺りで起すと言った感じかな?
 まあ、黒い天使核持ちの集結した瑞穂基地を「第二の喇叭」の時の如く鍵を使ったマスケンヴァル現象で一気に片をつけるとか辺りが妥当かな。その際には偽装として適当に天使兵をけしかけて置くとか、そんなところでしょう。
 「第六の喇叭」辺りはあまり想像は付かないが、黙示緑に準えて世界的虐殺でも行っておく?
 「第七の喇叭」で野望成就。世界全体が俗に「千年王国」といわれる何かに摩り替わると言ったそんな感じかも?
 天界と融合するなり、天界を攻めるなり。まあ、そこまで規模が大きくなると別に決めて置かないでも良い部分になるんだろうね。ゲームとして遊ぶ分には「第五の喇叭」の時点で詰むので問題なしやたぶん。
 まあ、「第七の喇叭」こそがこの戦争の終結であることは間違いない。審判の日、ジャッジメントデイって奴やね。
 
 ただ、これらが全て総統によるワンマンゲームであるかと言うとそうでは無く、総統以外の黒い天使核持ちの中には数人「第七の喇叭」を起す資格を持つもの*8が存在すると思われる。まあ、総統直系の息子で黒の天使核を持っている連中やな。ラルフとか神楽とか、その他にも居る可能性は高い。これらは666の黒の天使核とは別に計上されているとかあるやもしれん。いわゆる救世主候補者って連中やね。まあ、セッション的に使う事は無さそうだけど……
 
 とまあ、こんな感じで設定しておく。
 多量に増殖した有資格者、ギアドライバーに選ばれし者は「選ばれし者」であっても供物として選ばれし者って感じで良さげな感じがする……
 エンゼルギアの世界そのものが、黒い天使核に基因して黒い天使核によって収束するお話って感じやねぇ。
 
 ちなみに上記の設定で行くと-原罪証明書-の設定に当て嵌めると、一つエラーが発生する。
 それは、総統の千年王国への締めの予定が1999年末もしくは2000年末だったとすると、-原罪証明書-の設定である2001年の時点でその計画は崩れている事となる。
 まあ、つまり-原罪証明書-の世界の中では総統の計画にズレが生じ始めてきているって設定だった!
 って事でどうよ?
 
 と、以上のような思惑設定をしてみたのだけど、どうやろう?>id:standbyの中の人
 
 他の勢力の思惑に付いては、また次回以降で。

*1:なんせルールブックに於いては、シュネルギアに乗って米軍歩兵師団と戦闘を行なう際には、モブとすら扱われずPLの発言一つで壊滅させられるような扱いだ。

*2:アラフニ

*3:あくまで、合衆国では無く、総統直下の者。おそらくはゾフィーとかもこの辺りに居そう。

*4:アペルギアや完全機械化兵に関してもその関与が無いとは言えない。

*5:1000年に1人と言う今までに比べれば

*6:載ってた気もするけど載っていなかった気もする。

*7:つうか、合衆国に嫌がらせが出来ればそれで良い。

*8:ありていに言うと望みを叶える事ができる者